「発売から1年は定価以下」の法律で転売はなくせる? 実現できるか調べてみた

「『発売から1年は定価以下の出品しか出来ない』って法律作れば転売撲滅出来るんじゃねーのか?」
9月28日、X に投稿されたこの一言が、850万回以上表示され、7万5千件を超える「いいね」を集めました。人気の商品が発売日に買い占められ、フリマアプリで何倍もの値段で売られる――。そのたびに多くの人が感じてきた不満が、この一言に集まったのかもしれません。
では、この法律は本当に作れるのでしょうか。いまの法律と、これまでの例を調べました。
この投稿の最後で、あなたに聞きます:「発売から1年は定価以下でしか売れない」法律、あったほうがいい?
「定価より高く売るな」は、すでにある
チケットでは、もう法律になっている
実は、「定価より高く転売してはいけない」という法律は、日本にすでにあります。2019年6月14日に施行された「チケット不正転売禁止法」です[1][2]。
コンサートやスポーツのチケットを、くり返し、販売価格を超える値段で転売すると、業者でなく個人でも罰せられます。罰則は1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方です[2]。ただし対象は、日時・座席が決まっていて、転売禁止が券面に書かれ、買った人の名前が確かめられているチケットに限られます[1][2]。
モノでも、期間を区切って禁止したことがある
チケット以外でも例があります。新型コロナが広がった2020年には、マスクを買った値段より高く売ることが3月15日から禁止され、8月29日に解除されました[3][4]。2025年には、値上がりが続いた米でも、6月23日から同じように転売が規制され、2026年1月22日に解除されています[5][6]。
どちらも「国民生活安定緊急措置法」という法律を使い、暮らしに欠かせない物が足りなくなったときに、政府が品目を指定して止めたものです[3][5]。
韓国・台湾は、チケットの規制を強めている
台湾は2023年6月、芸術や公演のチケットを額面より高く売ると、額面の10倍から50倍の罰金を科すようにしました[7]。韓国も、これまでの「買い占めの自動ソフトを使った転売の禁止」から一歩進め、ソフトを使ったかどうかにかかわらず、くり返しの高額転売を禁じる改正法を2026年8月11日に施行しています[8]。
ゲーム機やカードは、企業とアプリが対策している
一方で、ゲーム機やトレーディングカードのような一般の商品には、転売を止める法律がありません。いま動いているのは企業の側です。株式会社ポケモンは、マイナンバーカードで本人を確かめたアカウントに、一部の商品を優先して売る仕組みを検討しています[9]。フリマアプリの大手は、マクドナルドの「ちいかわ」ハッピーセットの出品を一定の期間禁じました[9]。
それでも、法律にするには壁がある
- ゲーム機やカードは「暮らしに欠かせない物」なのか。 マスクや米で使った法律は、生活に必要な物が足りないときのためのものです[3][5]。人気の商品に広げるなら、新しい法律が要ります。弁護士の解説では、許可のない転売を一般に禁じる法律は無く、「買ったものを売る」のは市場経済の根幹だとしています[10]。チケットだけ規制できたのは、会場の席の数を増やせないからだ、という説明もあります。商品なら、作る側が生産を増やせます[11]。
- 「定価」を誰が決めるのか。 メーカーが店の売り値を決めて守らせることは、書籍・新聞などを除き、独占禁止法で禁じられています[12]。多くの商品には、法律で決まった「定価」がありません。マスクと米の規制が「定価」ではなく「買った値段」を基準にしたのも、このためだと考えられます。
- 法律があれば、転売は止まるのか。 取引の多くは個人どうしで、海外のサイトや手渡しもあります。フリマアプリは、米では出品そのものを禁止してAIと目視で見張り[5]、マスクでは政府が規制を解いたあとも出品の禁止を続けました[4]。法律をつくっても、実際に見張るのはアプリの側になるかもしれません。
読んだあなたはどう思う?
「定価より高く売るな」は、チケットでは法律になり、マスクと米では期間を区切って実際に行われました。ただ、ゲーム機やカードのような商品に広げるには、「何を守るための法律なのか」を説明する必要があります。
出典
- 文化庁「チケット不正転売禁止法」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/ticket_resale_ban/index.html
- 政府広報オンライン「チケットの高額転売は禁止です!チケット不正転売禁止法」 https://www.gov-online.go.jp/article/201904/entry-8236.html
- BCN+R「マスクの高額転売が禁止に、違反者は1年以下の懲役か100万円以下の罰金」(2020年3月10日) https://www.bcnretail.com/market/detail/20200310_161753.html
- BCN+R「マスク転売規制解除後もフリマアプリは出品禁止」(2020年8月27日) https://www.bcnretail.com/market/detail/20200827_188349.html
- Impress Watch「政府が米の転売規制 メルカリやヤフオクも23日から出品禁止」(2025年6月13日) https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2022615.html
- 農林水産省「米穀の転売規制の解除について」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/tenbai_kisei.html
- 台灣英文新聞「《文化創意產業發展法》修正條文生效」(2023年6月2日) https://www.taiwannews.com.tw/zh/news/4908390
- スポーツ京郷「암표 시장에 ‘포청천’ 떴다」(2026年5月28日) https://sports.khan.co.kr/article/202605281529003
- AdverTimes「“悪質転売ヤー”が頭を抱える時代へ ポケモンカード購入にマイナンバーカード本人確認、メルカリ・ヤフオクも包囲網で“逃げ場なし”」(2026年5月22日) https://www.advertimes.com/20260522/article544719/
- 福井健策「転売社会の法的問題 ~転売、転売目的の購入はどこまで自由なのか~【アップデート編】」骨董通り法律事務所 https://www.kottolaw.com/column/190709.html
- 小林航太「「チケット以外は何をどんな値段で転売してもいい」日本の法律が"転売"の規制に踏み込めないワケ」PRESIDENT Online(2022年12月1日) https://president.jp/articles/-/63770
- 公正取引委員会「こんなコトが起こると暮らしがあぶない! 企業の違反行為」 https://www.jftc.go.jp/ippan/part2/act_05.html
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